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樹氷柄の着物

8月も残すところ数日となった。

今年はコロナ禍のお蔭で、
お正月の数回以外、着物を着ることがなかった。
3月から研究会もお茶会もすべて中止となっていたからね。
毎週着物を着るのは辛いけど、
半年もの間、着物の袖を通さないのも寂しいものだ。
このまま秋になっても着物を着る機会はないのかも~?

8月の「ガラスと氷リレー」で
皆様の素晴らしい品々を拝見していて、
ふと、着物に氷っぽい柄があったことを思いだした。
雪輪や雪の結晶などの意匠の着物はよく見るけれど、
「氷」というのはちょっとめずらしい気がする。
樹氷柄の着物_e0366006_15090901.jpg
写真ではグレーに見えるけど、
実際はけっこうしっかりとしたブルー地に白い柄の臈纈染(ろうけちぞめ)。
この文様染はインドで生まれ、中国を経て日本に伝わり、
飛鳥・奈良時代に盛行したというもの。
臈纈染は木版に蜜蝋をつけて文様を写し、
染め液に浸して防染した後、熱で臈を除いたもの。
現代にもその技法はちゃんと伝わっていて、
暖簾や敷布、風呂敷などに使われているという。。

ちょっと昭和の香りがするでしょ?
そう、これは義母が残した着物だった。

義母は大正末の生まれ。
美濃の庄屋の末娘で父親は裁判所勤務ということで、
子供の頃から何不自由なく育ったらしい。
戦争中は陸軍の姉夫婦について満州に遊学し、
帰国後、戦死した兄にかわり跡取り娘として医者の義父と結婚。

戦後は御多分にもれず、つつましい生活を余儀なくされたけど、
子供の頃からの裕福な暮らしと満州での海外暮らしで、
良いものを見る目は培われていたと思う。
私がお嫁に行った頃は、
もう普段は洋服が多かったけど、
特別な日にはもちろん着物をしゃきっと着て、
洋服もちょっとモダンな雰囲気のものを着ていた。

義母が亡くなった時、お棺に入れる着物を探していたら、
可愛い花柄の着物がたとう紙に包まれていて、
「好きなきもの」と書かれていた。
義父と出会った頃に着ていたのか、何かのお祝いの席に着たのか、
きっと楽しい思い出のある着物だったのだろう。

お棺にはその着物を入れてあげた。
樹氷柄の着物_e0366006_15215867.jpg
義母は箪笥二棹の着物類を残していた。
兄嫁も姪たちも着物類は放棄したので、
私が何枚かの着物と帯を形見としていただくことになった。

箪笥の中に仕付け糸がついたまま残されていた小紋の着物を見つけた。
作家名と「樹氷」と書かれた紙片が挟んであった。
花柄の「好きなきもの」と同様、
この着物にも特別な思い入れがあったのかもしれない。
たぶん義母が大事にし、それでも着ることのなかった着物だ。
厳密にいえば、この臈纈染は氷柄ではないかも知れない。
しかし私にもこの柄は「樹氷」に見え、一目で着たくなった。
とはいえ小柄な義母の着物をそのまま着るのは無理。
そこでコートに直すことにした。

8月の最後に思い出した樹氷柄のコート。
義母の残したその他の着物や帯もコートや付け帯にして、
もう少し楽しませてもらおう。

9月は義母の17年目の祥月にあたる。















Commented by maria-12 at 2020-08-29 19:17
こんにちは。

ご主人様のお母さまを偲ぶ気持ちがにじんでいて、しみじみ胸を打たれました。
樹氷の柄というのは珍しいですね。
仕付け糸が付いたままというのは、一度も袖を通されなかったのですね。
コートに仕立て直して、お召しになれば、新しい命が吹き込まれますね。
形見の品も、こうして袖を通すことで亡き人の想いが蘇る。
そこには受け継いだ人の愛を感じます。

Commented by Grace-K52 at 2020-08-29 21:50
mariaさん コメントありがとうございます。

義母は息子二人だけで娘を持たなかったので、次男のお嫁さんは楽でした。何しろ年に数回帰省するだけだったから、「よそ行き」なわけです。笑
私は大らかな義母の性格が好きだったので、今でも夫と義母の思い出話を楽しめます。

着物の良さって、多少手を加えれば次世代に伝えていけることかもしれませんね。まあ、着る機会や場所がなければ無用の長物ですけど。
TVCMで「5年着なければ着ないよ。売っちゃえ」というのがありますが、見るたびに「そうだ!」と「もったいない」の両者の間で気持ちが揺れます。


Commented by gallery-asaba at 2020-08-30 22:30
ガラス、氷リレーに再度ご参加下さいまして、ありがとうございます。
そうですよね、雪輪や雪の結晶の模様は見かけますけれど、氷は未だ見た事がないです。
とっても珍しいですね。
つくづくタイトルに氷を付け加えておいて良かったと思います。
モダンなお着物ですね!
お義母様は、相当お洒落な方でいらしたのですね。
素敵なコートになるでしょうね。
着物の買取は、情けなくなるくらいお安いと聞いています。
馬鹿馬鹿しくなって、売る事をやめたというお話も何度か聞いています。
お義母様はGraceさんがその様に活かして着て下さる事を、とても喜んでいらっしゃる事でしょうね。

Commented by mamako48722 at 2020-08-30 23:55
お早う御座います。
着物にまつわるお義母様の思い出、お義母様の着物姿が目に浮かぶようです。
「好きなもの」を着て、向こうへ旅立たれたお母様は、きっとその着物を着た頃の若いお姿だったかも知れないですね。

写真でははっきりとした色はわかりませんが、樹氷柄のコート、是非立ち姿を見せてくださいね。

Commented by Grace-K52 at 2020-08-31 08:12
asabaさん コメントありがとうございます。

リレーの最後に滑り込みこみました。
本当の意味では氷ではないのかも知れませんが「樹氷」と母は感じたらしいので、
氷ということで参加しました(^^♪
地色はもっと濃い友禅染のブルーなのでコートにしても結構派手ですが……。
昔からの技法なのに、モダンに見えるって面白いですね。着物も昔のもののほうが派手な色柄が多いような気がします。
ほんとに着物の買い取りは安いです。昔、安く売ってしまった着物のことを今頃思い出して、
残念に思うこともあります。まだ着れたのに…なんて。

形見を大事にするのは、供養になると思っています。




Commented by Grace-K52 at 2020-08-31 08:22
紅葉さん コメントありがとうございます。

「好きなきもの」と書かれた、たとう紙に包まれた着物を見た時はちょっと驚きました。
けっこう派手な花柄だったんです。若い時の着物ですね。
義母は若い時の姿で旅立ったと思っています。
だから、もう着られなくなった(細くて入らない!)お気に入りの洋服もちゃんと取っておいて、旅立ちの時に着せてもらおうかしら、なんて私も思っています。笑

by Grace-K52 | 2020-08-29 17:02 | さりげない日々 | Comments(6)

思い出作りの私的覚書あれこれ


by Grace
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